2025/06/18
皆さんは自分自身の「やり抜く力」について考えたことはありますか?
やり抜く力とは簡単にいうと、目標に対する情熱を持ち、困難や挫折を乗り越えて取り組む粘り強さのことを指します。
特に、私たちエンジニアにとっては非常に重要な要素であり、新たな技術を習得し、開発途中で予期せぬ問題に直面しても、これらを乗り越えることで多くの経験を積み、自己実現に必要不可欠な力となります。
今回はそんな「やり抜く力」についてご紹介します。
世の中で「成功者」と呼ばれる人は「やり抜く力」を持ち合わせていると言われています。
皆さんの中には、「才能に恵まれているから」と、考える方も多いのではないでしょうか。
しかし成功を決めるのは才能ではありません。
あのウォルト・ディズニーですら、成功に至るまでに壮絶な挫折を繰り返しています。
理不尽な理由での解雇や、3度の会社倒産など、さまざまな苦難を経てもなお、「子どもに夢を届けたい」という目標をあきらめなかったことが、成功へと繋がったのです。
成功のために重要となるのは才能ではなく「情熱を維持し、目標達成のために粘り強く続ける力」、すなわち「やり抜く力」なのです。
次に挙げる力こそが、「やり抜く力」の核心的な「力」です。
これらの「力」は、生まれながらにして備わっているわけではなく、経験を通じて身につけられる後天的な「力」です。
誰もが、これらの能力を意識的に強化することで、成功への道を歩むことができます。
エンジニアにとって必須の「力」とは、技術的スキルだけでなく、未知の問題への対応能力やプロジェクトを成功に導く応用力も含まれます。これには、粘り強さ、調整力、そして技術の進化に対する継続的な学習が重要です。
エンジニアの仕事は、しばしば未知の問題や予期せぬ障害に直面します。
プロジェクトが進行するにつれ、新たな技術的課題が生じることがあります。
これらの課題を乗り越えて解決策を見出すためには、途中で諦めずに取り組む粘り強さが必要です。
ソフトウェア開発やエンジニアリングプロジェクトでは、多数のステークホルダーとの調整や多様な要求を満たすことが求められます。
プロジェクトを期限内に、かつ高品質で完成させるためには、たとえ障害があっても目標に向かって努力を続けることが重要です。
技術は絶えず進化しています。生成AI技術の急速な拡大、高度化するネットワーク技術、複雑化するセキュリティ技術といった分野での変化に加えて、ソフトウェア開発では新しい開発手法、プログラミング言語、ツール、フレームワークが登場しています。
このため、エンジニアは常に学習を続ける必要があります。
競争力を保ち、効果的に仕事を行うためには、自己成長を継続する強い意志が求められます。
プロのエンジニアとして成功するためには、技術の進化に適応し続ける学習意欲と、プロジェクトを責任を持って完遂する粘り強さが不可欠です。これらの能力は、プロジェクトの各段階で新たな課題に対応し、最終的な成果を形成する上で重要です。
「やり抜く力」は、単に「才能」だけではなく、「スキル」と「努力」の積み重ねから生まれます。
具体的には、下図のように、「才能」に「努力」をかけ合わせて「スキル」を獲得し、その「スキル」に更に「努力」を加えることで「やり抜く力」が形成されます。
努力がとても重要であることが、お分かりいただけるのではないでしょうか。我々エンジニアにとっても同じことが言えます。
重要なのは「努力」であり、「才能」よりもむしろその努力に依存していることが多いです。
知識や技術も、粘り強さや努力によって初めて真に活かされるのです。
「やり抜く力」は次の2つの要素から構成されます。
情熱とは、特定のプロジェクトや業務目標に対する長期的な熱意です。
これは一時的な感情ではなく、時間が経っても持続するものです。
情熱を持つことで、仕事に没頭し、モチベーションを下げることなく、目標達成に向けて一貫して努力を続けることが可能となります。
粘り強さとは、困難や障壁があっても目標達成に向けて諦めずに努力し続ける能力です。
エンジニアの世界では、特に重要で、計画通りに進まない状況でも柔軟に対応し、常に前向きに取り組む姿勢が求められます。
このように、アンジェラ・リー・ダックワース教授によって提唱された理論により、「やり抜く力」は、「情熱」と「粘り強さ」の2つの要素から構成されます。
情熱は長期的な目標への持続的な熱意を、粘り強さは逆境に対する持続的な努力を意味します。
これらの要素は「GRIT理論」で詳述され、困難に立ち向かう力や挫折からの復元力など、様々な能力と密接に関連しています。
では、逆にやり抜く力が弱いとはどういう状態なのでしょうか?4つの特徴から見ていきましょう。
短期的な成功や即時の報酬(いわゆるその場しのぎ)を求めがちで、長期的な目標を設定しても、真剣に取り組むことができないのが特徴です。
困難に直面したとき、簡単に諦める傾向があります。常に逃げるという選択肢を持ちながら生活しているため、心理的な安全を求める反応し、困難や挑戦に直面した際に必要な努力や苦痛を避け、その一時的な解決策として、逆境の前に逃げ出すことを選んでしまいます。
新しい環境や変化に対応するのが苦手であり、不確実性や予期せぬ変更が生じたときに適応することが難しいです。安定した状況や既知のタスクに固執したがる傾向があります。
目標達成に向けた行動を自己管理する能力が低いため、意志が弱く、気晴らしや誘惑に負けやすく、計画通りに事を進めることができないことがあります。
「やり抜く力」が弱い人は、短期的な成功を求め、長期目標へのコミットが難しい傾向にあります。
困難に直面すると容易に諦め、新しい環境や変化への適応性も低く、安定を好むことが多いです。
また、自己管理能力が不足しているため、気晴らしや誘惑に負けやすく、計画通りに進めることができません。
次にやり抜く力を伸ばす為の9つの習慣を紹介します。できそうなものから取り入れてみてください。
目標設定において重要なのは、「具体性」と「期限を設ける」ことです。具体的な目標とは、測定可能であり、数値で表されるものを指します。
数値を用いた明確な目標を持つことで、目標達成へのビジョンがはっきりとし、モチベーションを維持することがより容易になるでしょう。
例えば、「コードの品質向上」という目標は抽象的ですが、「目標工数と実際にかかった作業工数の差を30%以内にする」という具体的な数値目標を設定することで、目指すべき方向性が明確になります。
数値を用いた明確な目標を設定することで、誘惑に負けることなく努力を続けることが可能です。
行動計画を策定する際にまず最初に考えることは、「いつまでに行うか」ではなく、「具体的にいつ何をするか」「いつ開始するか」をスケジュールに落とし込む習慣が重要です。
目標達成に必要な行動を明確にし、「いつ」「どのような状況で」行動を起こすかをif-thenプランニングで計画しましょう。
これにより、朝の歯磨きのように「意識せずとも無意識で行える」状態を目指します。
目標達成の過程で重要なのは、目標までの距離を常に意識し、日々の進捗を確認することです。
盲目的な努力だけでは、進行方向が正しいか判断できないため、目標に向かって確実に近づいているかを把握し、何をすべきかを実感し、モチベーションを維持することが鍵となります。
これを実現する方法として、以下の2つがあります。
誰かからフィードバックをもらう場合は、先輩、上司、または目標の分野で成果を出している人からフィードバックを求めるのが有効です。
しかし、フィードバックを受ける際には注意すべき点があります。
「これまでの思考」ではなく「これから思考」を重視することが大切です。
フィードバックの際、「これまで思考」に固執すると、早い段階で満足感を得てしまい、気が緩むことがあります。
そうならないためにも、「これから何をすべきか」を常に考え、目標までの距離を把握することが必要です。
「現実的楽観主義」とは、目標を達成する信念を持ちつつも、その達成が容易ではないという現実を認識することです。
「目標は達成可能」と信じる一方で、「容易ではない」と認識し、直面する課題や困難をしっかりと見据えた人が、目標を達成する傾向にあります。
目標達成には、ポジティブな態度を維持しつつ、現実的な課題に目を向け、それに対処する準備を整えることが重要です。
このバランスを保つことで、成功の確率を高めることができます。
目標達成に向けて、「現実的楽観主義」を心掛けましょう。
次に重要な習慣は、「今はできないけれども、将来はできるようになる」という意識を持つことです。
目標を設定する際には、「現在何ができるか」ではなく、「将来何を成し遂げたいか」を考えます。目標には二つのタイプが存在します。
自分の能力を証明するために設定される目標で、自身の能力範囲内で設定されます。
現在は不可能なことに挑戦し、能力を伸ばして達成するための目標です。
研究によると、「証明ゴール」よりも「成長ゴール」の方が成功率が高く、失敗のリスクが低いとされています。
「証明ゴール」は、自己の能力内で設定されるため、達成が期待される「当たり前の目標」となりがちです。
このため、挑戦が生じた際には、「失敗したらどうしよう」とか「正しいことをしているのか」という不安に駆られやすくなります。
これにより、自己の能力を十分に発揮できず、失敗を招きやすくなります。
一方で、「成長ゴール」を持つことで、目標達成の過程で遭遇する困難を全て学びの機会と捉えることができます。
これにより、ポジティブな姿勢で自己の能力を最大限に活かしながら問題に取り組むことが可能です。
知能に関する考え方には、「固定的知能観」と「拡張的知能観」の2つがあります。
人間の能力は生まれながらにして決定され、変化することはないという考え方です。
経験や努力によって能力を向上させることができるという考え方です。
失敗を経験した際、「固定的知能観」を持つ人は、「自身の不足した能力が原因だ」と考え、諦めがちになります。
一方で、「拡張的知能観」を持つ人は、努力の不足や間違った戦略を原因と捉え、「成功は自分の努力次第だ」と信じて行動を見直し、努力を続けることができます。
「固定的知能観」を持っている人は、自分の成長に対して不安を感じやすいということも分かっています。
このような考え方は、自分の成長の大きな妨げになってしまいます。
「自分の頑張りによって能力は成長させられる」という「拡張的知能観」を持つようにしましょう。
意志の力は筋肉に似ています。激しい筋トレの後に筋肉が疲労するように、意志力も使い過ぎると消耗します。
意志力を鍛えるには、日常のルーティンから一歩踏み出し、新しい挑戦をすることが大切です。
尊敬する人物や実際に成功した人物を思い浮かべることでモチベーションの向上が可能です。
また、お気に入りの音楽を聴くことや、短い休憩を取ることも効果的な手段です。
小さな挑戦を積み重ねることで、意志力を強化し、仕事や学習に対する持続可能な姿勢を築くことができます。
意志力をいくら鍛えても、意志力に限界はあります。例えば、複数の困難な目標に同時に挑戦する。こういったことは避けるべきです。
どんなに意志力が強くても、一度に多くの事柄に取り組むと、意志力が持続しません。意志力に頼りすぎない、ということも大切です。
【自分を適切に管理する】
多くの目標やタスクに同時に取り組むのではなく、優先順位を決めて焦点を絞りましょう。
最も重要なタスクに意志力とエネルギーを集中させることが成功の鍵です。
誘惑や集中を妨げる要素を事前に排除することで、意志力を無駄遣いすることなく、重要な仕事に集中できます。
例えば、通知をオフにする、作業スペースを整理整頓するなど、集中力を高める環境を作り出しましょう。
適切な休息は、意志力を回復させる上で非常に重要です。
適度に休憩を取りながら作業を進めることで、疲労の蓄積を防ぎ、長期間にわたって高い生産性を維持することができます。
技術的なスキルや知識の向上だけでなく、自分自身の管理能力も同じくらい重要です。
自分の限界を理解し、自分を追い込むことなく、健康的で持続可能な方法で目標に取り組むことが、長期的な成功と満足への鍵となります。
意志力を賢く利用し、自己管理能力を高めることで、より生産的でバランスの取れたキャリアを築き上げていくことができるでしょう。
仕事の妨げとなる「やめるべきこと」から離れるためには、「if-thenプランニング」が役立ちます。
これは、「〜がしたくなったら、〜をする」という行動計画を立てることで、意識を「どう行動するか」にシフトさせるものです。
【実践的な「if-thenプランニング」の例】
我々エンジニアは日々の業務で多くの課題に直面します。しかし、「やめるべきこと」に焦点を当てるのではなく、「やりたいこと」「やるべきこと」に目標をシフトすることで、より生産的かつ満足度の高い仕事を実現できます。
特に、「代替のif-thenプラン」を活用することで、挑戦的な課題や新しい技術の習得へのモチベーションを保ち、継続的な成長と改善を目指しましょう。
多くの人は、ビジネスマンやスポーツ選手など成功者の実績を目の当たりにすると、しばしば「あの人は能力があるから」と簡単に片付けてしまうことがよくあります。しかし、成功者の多くは、長い時間をかけて努力を重ね、何度も失敗や困難を乗り越えて目標を達成しています。
このような粘り強さ、すなわち「やり抜く力」は、成功を掴むための重要な要素であり、精神的な健康を支えるとともに、人生の幸福感にも大きく寄与します。
誰もが意識的な努力を通じて、自らの限界を超えて成功への道を切り拓く可能性を持っているのです。
皆さんも「自分には才能がない」「専門外だ」と簡単に諦めるのではなく、日々粘り強さを意識し、技術力と共に「やり抜く力」を育てていきましょう。